書くだけ堂

わっと思いついた時にわっと書きます。

家が燃えたけどライブに行ったオタクの話

【2019.04.13】
 
皆様ご無沙汰しております、筆者です。
前回の更新からずいぶん間が空いてしまいました。
なにせ平々凡々な人生ですので、特筆すべき日常おもしろハプニングなど無く、故に更新が遅いのは必然なので許してほしい。
 
さて、そんな平凡オブ・ザ・イヤー受賞者の私ですが、珍しく非平凡な経験をしたのでブログに書きたいと思います。
 
まず、祖父が亡くなりました。
小さい頃からめちゃくちゃよく遊んでくれたおじいちゃん。大人になってからも帰省するたびに会いに行っていました。そんな大好きなおじいちゃんが亡くなりました。
 
しかし、これは確かに悲しい出来事ではありますが、誰にでも訪れる事なので特に珍しい事ではありません。
問題は、おじいちゃんの葬式の日時です。
 
少し前から闘病中のおじいちゃんの容態が悪くなっていて、早くて1週間、遅くても1ヵ月以内には…という状況。少しでも長く生きてほしい気持ちや、でももう十分頑張ったと思う気持ちなんかが渦巻く中、私はこう思っていた。
 
ライブ行けるかな…?と。
 
そう、私がもの凄く楽しみにしているライブがある。ちょうどおじいちゃんが危なそうな日あたりに。
ツアー遠征2DAYS!行くことは半年前から決まっていた!友達と観光もする!美味しい物も食べる!宿も飛行機も既に取った!準備万端で浮かれている!
そんなライブがあるのだ。
 
おじいちゃんには申し訳ないが、ライブの日に被らないかソワソワソワソワしてしまって、毎日気が気ではなかった。薄情な孫だと思うだろう。自分でもそう思う!なんつー最低な孫だ!じじ不幸者めが!孫を一からやり直せ!
しかし、ライブは筆者の生き甲斐。これがあるから仕事も頑張れるし、何か辛いことがあっても立ち直れる。つまり、おじいちゃんを亡くした悲しみを拭ってくれるのはライブのはずなのだ。だがそのライブが肝心のおじいちゃんの葬式で行けないという圧倒的矛盾。
 
もちろんおじいちゃんを悼む気持ちはある。これは嘘ではない。逆を言えば、本当に心から悼んでいれば、それは葬式という形を取らずとも良いのではないか?筆者の心の中にさえ確かな気持ちがあれば、日本全国、世界各国どこにいてもおじいちゃんを天に送っているのと同義ではないのか?
つまり要約すると、ライブは行かなきゃ見れないが、おじいちゃんはどこにいても悼めるのでは?という思考にたどり着いた。とんでも思考である。
 
ああっ!罵詈雑言が聞こえる…!
分かる、分かってます。人間失格、大人の底辺、孫の風上にも置けない風下野郎だってのは分かってます。分かってるけどライブに行きたい!だって物心ついてからこの方ずっとオタクなんだもの!
いや、それ言ったら生まれてこの方ずっとじいちゃんの孫だわ………嗚呼、墓穴……。
 
それはさて置き(祖父をさて置くな)
 
ライブには筆者とAさんの2人で行く予定なのだが、簡単に説明すると【2人一緒に行かないと会場に入れない】システムになっている。
つまり、私が葬式で行けなくなったらAさんもライブ会場に入れなくなる。これはヤバい!
もちろん救済措置はある。あるのだが、Aさん一人でも会場に入れるようになる代わりに、筆者のチケットは消滅する。その手続きをしたが最後、筆者がライブ会場に入る術は無くなる。そういうシステムなのだ。理不尽である。
それに何より、この手続きが出来るのがライブの一週間前まで。それまでに「行く」or「諦める」を決めなければならない。
 
しかし!
一週間前の時点で筆者はまだ『シュレディンガーの筆者』であった!!
おじいちゃんがいつ亡くなるかは分からない。これは神のみぞ知るってやつだ。ライブに被る日かもしれないし、ライブに被らない日かもしれない。
『ライブに行ける筆者』と『ライブに行けない筆者』が同時に存在している。まさに『シュレディンガーの筆者』だ。
 
「そんなことより祖父を取れよ!」と良心が叫んでいるのも聞こえるのだが、
「おじいちゃんは果たして、孫の笑顔が葬式で失われるのを望むか!?いいや、望まないねッ!孫にはいつまでも健やかに笑っていて欲しいはずだ!ライブに行くこと、それ即ち祖父孝行!」
という脈絡不明な悪魔の囁き……ならぬ、悪魔のクソデカ声がうるさい。
 
アーティストだって、いつしんで死んでしまうか分からない。病気で療養するかもしれないし、事務所とケンカして脱退するかもしれない。天下の某台風グループでさえ休止する時代だ、生きて会えるうちに会っておかないと「次」は無い。
いや、まぁ葬式にも次は無いんだけど…。
 
生きている人間を優先するのは悪い事なのか?
しかし、孫としての倫理を手放していいのか?
シュレディンガーの筆者、悩む。
悩みながらも意地汚い希望を捨てられず、チケットの変更手続きには手を出せないまま時間は過ぎていった。
 
長々と語ったが、結果から話そう。
おじいちゃんが亡くなったのはライブと被る日ではなかった。通夜も葬儀も、奇跡的に被らなかった。
つまり、ライブも通夜も葬儀も行けるフルコンボを達成したのだ。我、シュレディンガーの賭けに勝利せり…!(祖父を賭けるな)
 
さて。
ここからが怒涛の展開だ。
 
母親「おじいちゃん、さっき亡くなったから」
筆者「うん」
母親「通夜、明日する」
筆者「明日!?」
 
慌てて飛行機を取る筆者。電光石火の如くチケットを取る。予・約・完・了!
普段からツアー遠征している交通手腕が遺憾無く発揮された瞬間であった───!あっぱれ!!
 
5分後
母親「あのね」
筆者「うん」
母親「葬儀場の予約いっぱいやったわ(笑)」
筆者「パードゥン?」
母親「通夜は明後日にするわ」
 
飛行機の変更手数料アタック!
筆者はHPと財布に14,000のダメージを負った!
瀕死だ!もうワンパンチ喰らったら死す!
 
この日程変更により、スケジュールがかなりタイトになった。もう奇跡としか言い様がないんだが、こんな感じだ。
 
1日:帰省→通夜
2日:(友引なので何もしない)
3日:葬儀
4日:東京に帰る(遠いので半日以上かかる)
5日:遠征先に行く→ライブ
6日:ライブ→東京に帰る
 
限界オタクの限界スケジュールである。
被らなかっただけ奇跡なんだが、にしても神様、起こした奇跡ギリギリすぎんか。
ギリギリでいつも生きていたい人間はKAT-TUNだけなんだよ。
 
そんなこんなで日が過ぎ、明日はいよいよお通夜だ。妹と2人でいそいそと帰省の準備をしていた夜23時。
なにが起きたと思う?
 
発端は、妹のLINEにBちゃん(実家の近所に住んでいる妹の同級生)からメッセージが来たことだった。
 
B「妹ちゃん、大丈夫!?」
 
さすが田舎町、情報が早い。おじいちゃん亡くなったのをどこかで聞いたのか、妹を心配してくれている。
 
妹「(シャカリキ元気なスタンプ)」
B「よかった!大丈夫なんやね」
妹「うん、まだ実感ないけど」
B「お父さんとお母さんは大丈夫!?」
妹「うん。大丈夫だよ」
 
親の心配までしてくれるとは、何ていい子なんだ。
 
B「お父さんとは昨日、偶然会ったばっかりだから余計に心配……」
妹「大丈夫だよ、ありがとう」
 
どんだけ心配してくれてるんだ、天使か?
 
B「消防車とかいっぱい来てたみたいだから」
妹「?」
 
ショーボーシャとは?
 
妹「なに?どういうこと?」
B「え?なんか、妹ちゃんのアパート燃えてるって」
 
は?
 
妹氏「え!姉ちゃん!ちょ、うちのアパート燃えてるって」
筆者「そんなわけwww…………ないよな?」
 
Bちゃんに電話確認する妹。
 
妹氏「……………やっぱ燃えてるって」
筆者「なにーーー!!!???」
 
筆者の実家は木造のボロアパート。あまりにボロいので年々家賃が安くなっているというヤバ物件だ。
 
筆者「いや、でもどこの部屋かは分かんないしさ。ちょっとした小火かもしんないし」
 
落ち着け。
まだあわてるような時間じゃない。
 
筆者「とりあえずお父さんに電話して」
妹氏「うん」
 
父親「もしもし」
妹氏「もしもし?なんか…あの…火事って聞いたんだけど……………」
父親「ああ、そうそう。今うちの上の部屋が燃えてる」
 
あーーーー!!!???
 
ありのまま起こったことを話すぜ。
通夜の前日に家が燃えた。
何を言っているのか分からねーと思うが、筆者も何が起きたのか分からなかった。
 
父親「寝とったらさぁ、すごいサイレンの音が聞こえたんよ。えらい近くで停まるなぁと思ったらバンバン!て玄関叩かれて、消防士に『早く出てください!』言われて今外に出てる」
 
まじだった。
家が燃えている。
 
正確に言えば『筆者の家』ではなく、『筆者の家の真上の階に住んでいる人の家』が燃えた。ウチが火元ではないので安心してほしい。
 
幸い、アパートの住人はみんな早々に避難して無事だった。もちろん筆者の両親も無事だ、よかった。
そりゃBちゃんも何度も「大丈夫!?」て聞いてくるわな。人命かかってんだから。
ここでさっきのLINEのやりとりを見ると『火事について話しているBちゃん』と『じいちゃんの葬式について話している妹』で微妙に会話が噛み合ってしまっているのが笑えてくる。「実感ないけど大丈夫」のとこなんか絶妙でアンジャッシュのコントみてぇだ。
 
ところで筆者には小学一年生から同じアパートに住んでいる幼馴染の親友がいる。その親友も今は上京して都内に住んでいるのだが、何しろ同じアパートが実家なので慌てて電話した。
 
筆者「アパート燃えてるらしい」
親友「まじで?聞いてない」
 
筆者の親もそうだが、親友の親もそうだ。
家が燃えたらまず子供に電話するのでは!!??しないの!!??
家が燃えた時の作法をワタクシ存じ上げないのですが、たぶん子供に電話した方がいいと思うんだよなぁ〜〜!?
BちゃんがLINEくれなかったら、帰省して初めて家が燃えてるの見て腰抜かすとこだったわ。やはりBちゃんは天使であった、ありがとう。毎晩Bちゃんの方角に向かって両手合わせて拝むね。
 
火は1時間ほどで鎮火。燃えたのは上の階のみで、幸いうちには火は届かなかった。
しかし、やはり真下。消化水でビチャビチャである。
運良く家財はほとんど助かったが、すすの混じった水で家全体が濡れた。床も壁もふやけているし、何より焦げ臭い。とてもじゃないが、人が住める状態ではない。
筆者は実家を失った。
 
LOST OF JIKKA.  
カミングスーン
(LOST OF JI-CHAN.と同時上映)
 
言うてる場合か。
 
たまたま隣の部屋が空き部屋だったので、大家さんの計らいでそこを使っていいことになった。まだ使える家財をその部屋に移し、水道ガス電気を引いて、とりあえず最低限の生活はそこで出来るようになった。
筆者はこの時まだ東京に居たため、何も手伝いが出来なかったのだが、これを1日でやってのけた親はエラい。まじでリスペクト。親の行動力isすごい。
ギリギリで生きるとは、まさにこういう事だね!筆者の親、今日からKAT-TUNと言っても過言ではない。
 
最終的な筆者のスケジュールはこうだ。
 
0日:実家燃える
1日:帰省→通夜
2日:実家の片付けを手伝う(友引)
3日:葬儀
4日:実家の片付けを手伝う→東京帰る
5日:遠征先に行く→ライブ
6日:ライブ→東京に帰る
 
限界オタクの限界超えたスケジュールである。
 
しかし考えようによっては、何ともテトリスのように上手く組み合わさったスケジュールだと言えなくもない。
 
もしおじいちゃんが死ぬのが1日早かったら。
葬儀場の予約は空いていただろうし、筆者は1日早く帰っていた。そしたら火事の時、実家に居たはずだ。おお…………怖………。
結果的に人に被害は無かったとはいえ、その時そこに居たらどうなっていたかは分からない。実家に居なくてよかった。
それに、通夜の翌日がちょうど友引で、家の事を諸々する時間があった。友引じゃなかったらすぐに葬儀だったはず。そしたら慌ただしくて、家の事をしている時間は無かっただろう。友引を挟んでくれて助かった。
 
逆におじいちゃんが死ぬのが1日遅かったら。
これは言わずもがな、ライブに被っていただろう。筆者が死んだ目で葬式に出ていた。
それに、こちらもまた友引を挟まなかったかもしれない。家の事をする暇もなく、通夜して葬儀してワーーーっ!家がまだ無い!なんて事になっていたかもしれない。
 
おじいちゃん、なんて日に死んだんだ。
すげぇよアンタ。
テトリスの宇宙チャンピオンだよ。
 
え?
葬式あって火事あって、こんな事になってまで筆者はライブに行くのか?
 
行くに決まってるでしょうよ!!!
むしろここまで来たら、天国のじいちゃんが行ってらっしゃいと大手を振ってくれてるとしか思えん!ほら、孫のこの健やかな笑顔を見てくれ!じいちゃん!大好きだ!ありがとう!
 
かくして、通夜も葬儀も無事に終えました。
おじいちゃんと最後のお別れ、ちゃんと出来てよかった。風下オブ・ザ・イヤー受賞のクソ孫にならずに済んだ。
 
家も何だかんだで、とりあえずは落ち着いた。まだまだ本宅の問題は山積みだけど、別荘の方で生活は出来ます。
※避難先の隣室を家族で『別荘』と名付けた。歩いて2秒の別荘。とても豪華だ!
 
そして念願のライブにも行ってきました。
本当に本当に楽しかった。
心と身体の底から元気が湧いてきて、明日からも頑張って生きようという気持ちになった。
「LOST OF JIKKA.」
「LOST OF JI-CHAN.」
そして
「GET TO GENKI.」
の三本立てって感じだ。
 
あと、スピンオフで「筆者、家燃えるの2回目」っていう話もあるんですけど、これも聞いてもらえますか?
まだ今の実家に引っ越す前、筆者がまだ赤ちゃんの頃に住んでたアパートも燃えたんですよ。
その時も「真上の部屋」が火元で燃えて、ウチは家族全員なんとか助かったけど引越し。っていう。
今回と全く同じ構図。
どんな偶然だよ。
どんだけ上の部屋燃えるんだよ。
2度ある事は3度あるってか?
あってたまるか!!!
 
火事って身近な災害なんだなぁ…(しみじみ)
 
しみじんでる場合か。
 
さて、読者の皆さま。
ここまで不謹慎にイースト菌をぶち込んで膨らませたような話を読んでくださり、ありがとうございました。
喪中ではございますが、少しでもクスッとしてもらえる箇所がありましたら嬉しいです。
 
「火の用心、まじでホントに、火の用心」
 
筆者、心の一句でした。
 
 
 
 
ふじこ
 
 
 
 
 
 
 
 
ところで、おじいちゃんが死んだ日にウチ(東京)の電気がプッッッツリ消えたんですよ。買い替えたばかりの電球なのに、そりゃもうプツリと。停電とかじゃないですよ。部屋の電気だけが事切れたように消えたんです。何か霊的なもの、感じるじゃないですか。
 
筆者「わっ!まさか!お、お、おじいちゃ──」
妹氏「塩撒け!塩!!!」
 
おじいちゃんを祓うんじゃありません。
〜完〜